今日は七里ヶ浜でも、いつもの正面とは違い峰ヶ原に入っている。
最近地形が決まりインサイドではチューブに
今年初めての台風からのうねりが届いている。
明日には稲村や大崎といったリーフにもヒットするだろう。
サーファーならよだれをながして喜びそうな極上の波
「よう、友美今日は明菜に逢えなくて寂しいだろ！」
こんな日を見逃すはずのない健くん登場
「なに言ってるんですか関係ないですよ」
「今度名前聞いてこいよ！」
「健さんいけばいいじゃないですか！鵠沼の帝王なんだから」
「よし今日チューブに入れなかったやつが聞きにいくってどうだ」
「そんな無茶ですよ…」
「おい、悟お前も参加しろ」
「よし俺が審査してやろう！」
そう言ってインサイドよりに上杉さんがポジショニングした。
まず無言のまま悟くんがパドルを始めた。
相変わらず素早いテイクオフ、ボトムターンからカービングそして
波が厚くなったところでラウンドハウスカットバックを決めていた。
そして予定通りにチューブセクションに入っていく、
一瞬ストールしてグリーンルームを駆け抜けていった。
やはり口にはださないけどねらっているかもしれない要注意だ。
次は健くんがまずは深いボトムターンからオフザリップ
力強いダウンザラインを繰り返していた。
オッキー顔負けのスラッシュ気味のカットバックから
ボトムでタイミングを計りながら、
グラブレールで一瞬のチューブを堪能している。
あの笑顔が憎たらしい。
「友美、俺が見本見せてやるから、お前はここで見てろ」
そう言って奥のピークにポジショニングした。
さすが、プロ第一期生一般人では絶対に抜けられないピークから
いとも簡単にテイクオフ、カットバックに関しては現役プロサーファーに
引けをとらない。もちろん誰よりもグリーンルームに長くいた。
でも見た目はオヤジなのでよく前乗りされている。
でも決して怒らないのが上杉さんのすごいところだ。
「友美、バン、シュパ、ドンだ。」
上杉さん特有の擬音交じりの言葉だ。
普通の人には絶対に伝わらないと思うけど…」
でもすごすぎて、これじゃ見本にならないと心でつぶやいた。
今日1番のセットが舞い込んできた。
GO！と健くんが指を指した。
もう腹をくくるしかない。体中に緊張が走る。
あぶなくパーリングしそうになったが、レイト気味にテイクオフ
小波ならまだしもオーバーヘッドのサイズになると体が付いていかない。
でも何とかサーフボードの性能のおかげでチューブセクションに
もちろん皆みたいにボードを操れる技量はない。
頭上にリップがおおいかぶさってきた。
「神様お願い」と心の中で口ずさんだが、そうは上手くいかなかった。
そのまま洗濯機状態予想通り僕の負け最初からわかっていたことだ。
世間では、軟弱に見られがちなサーファーも実際は
年上の人には逆らえない、体育会系なのだ。
次の日いつもの場所に彼女は現れた。
いつも鵠沼でナンパに励む健くんでさえ声をかけられない理由が
彼女のまわりにはいつも「私の邪魔をしないで！」そんなオーラが漂っていた。
「あの・・・」と小声で言ってみたが振り向いてくれない。
沖では健くんが見ている。
勇気をふりしぼって大きな声で
「すみません。名前を教えてもらえますか！」
駐車場全体に響くほどの声で
そのとき一瞬の静寂の中
「皐月だけど何！」
これが生まれてはじめてのナンパだった。
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酔っぱらいになら「お姉ちゃん、飲まない？」と絡まれたことはあります。
友達には、「あんたは淋しい女だよ」と言われます。
後輩の男の子に「頼む、一回あたしをナンパしてみてくれ」と頼んだところ、「それだけは勘弁して下さい」と言われました。
そうやって、こんなふうに育ってしまいました。